今日は、ちょっと私に昔起こった出来事をシェアします。私、現在年長の長男を妊娠中、「妊娠うつ」になりました。それまでの人生で、うつになったことはなく、本当に自分でもびっくりでした。私のケースは、気持ちが落ち込むとかよりも、不眠・呼吸がしにくい・涙もろい・不安というのが主な症状でした。不妊治療までして出来た子ども。うれしくて幸せなハッピーマタニティライフが待っていると思っていたのに、とんでもなく苦しい時間でした。子どもはいとおしくてたまらないはずなのに、眠れない夜が怖く、とりあえず早く産まれてきてくれないかな…とか考えていた私。元気に産まれてくるよう早産になりませんように…と望むのが当たり前なのに、そう思えない自分を責めていました。
私は心理士です。うつ病を患う方とたくさん関わってきたし、「うつ病」に関する知識は一般の方よりはあるはずだけれど、それでも回避することはできず、私自身の身の上にある日突然ふりかかってきました。今はおかげさまで、うつ病の症状は何もなく、元気に日常を送らせてもらっています。いろんな助けによって回復できたと思っていますが、その中のひとつは、私が心理士であったこと、つまりうつ病に関する知識があったことが有効に働いたと思っています。
というのも、妊娠中に症状が出始めた時に、「あ!私うつ病になってる!」と早期の時点で気付けたこと、そして一切躊躇せず、すぐに病院を受診できたことだと思います。メンタルヘルスにおいてとても大切なことは、早期発見・早期介入!すぐに受診して、妊娠中の内服の安全性やリスクをちゃんと説明してもらい、自分で納得して内服をできたこと、そしてすぐに眠れるようになったこと、それが本当に自分を助けてくれたと思っています。だから、今日は、妊娠中や産後のうつについて知っているとよい基本的な情報をお届けすることで、うつ症状に悩む方のお役に立てればと思っています。もし、これを読んで、私うつかも?〇〇ちゃんうつじゃないかな?って思ったら、ふんばらず、すぐにサポートにつながってもらえたらと願っています。
妊娠中や産後の女性によくみられる「妊娠うつ」とは?
女性は、生涯の中で、妊娠中や産後にうつになりやすいというのをご存じでしょうか。うつ病になると物事を悪くとらえてしまったり、悲観的に考えてしまうので、正しい知識をもつことで、「うつ病になっている自分」を少しでも俯瞰的にて、ネガティブループから一歩足を踏み出せるようになることが大切です。
うつ病ってどんな症状?
うつ病についてメディアで取り扱われることも多くなってきたので、多くの方が、うつ病になると「気分が落ち込む」という症状はご存じかと思います。他にどんな症状があるのか見ていきましょう!
精神症状
- 気分の落ち込み、悲観的に考える、楽しみや喜びを感じれない
- イライラ
- 不安感・焦燥感(あせり)…私はこの症状が炸裂でした!!もう何もかも不安で、風邪ひいて、薬局に風邪薬もらいにいったときに、お薬が3種類あっただけで、「これ飲んでいいの?大丈夫なん?めちゃくちゃいっぱいあるやん」って薬局で号泣。うつ病を患っているとしらない薬剤師さんびっくり!!!みたいなね(笑)
- 集中できない
- 無関心になる、服装なども気にならなくなる
身体症状
あと、よく見逃されがちなのが身体症状です。うつ病になると「気分が落ち込む」などの精神症状があることはみなさんよくご存じかもしれませんが、実は、精神症状よりも、下記のような身体症状の方が強くでることがよくあります。体があなたの異常事態を教えてくれていると理解して対応することが大切です。
- 睡眠障害(不眠や過眠)…私はほんっっっとーーーに眠れなくなりました。眠れないって聞くと、「まぁ人間寝なくても死なないでしょ~」って思ってしまうかもしれませんが、本当に昨日もおとついも寝てなくても、それでもまた眠れないんです。しかも、うつ病の時の自分は、もう今夜も眠れないかもしれないということが、恐怖で恐怖で、そのことを想像するだけで、また不安が爆発して、息ができなくなる…という感じでした。
- 倦怠感、体のだるさ、身体のしびれ
- 動悸…私は不安症状が強かったので、動悸もありました。「私の周りの酸素がたりないーー!!!」ってずっと感じていました。
- 身体の痛み、腹痛、下痢・便秘
- 頭痛や耳鳴り
- 肩こり
- 食欲不振、味覚障害
あと、私が個人的に体験した症状ですが、自分が風船のような膜の中に入っているような感覚がありました。専門用語的には、「現実感消失」というものに似ているかと思うのですが、私の場合は、現実感が消失した感覚はありませんでしたが、ただ膜の中に自分がいて、外界で起こっていることよりも、自分の脳内で起こっている「どうしよどうしよ…」とか「息できない…」とかの方が気になってしまうというような感覚でした。ま、それが現実感消失なのかな・・・(笑)うまく説明できませんがこの「風船のような膜の中に入っている感覚」というのを、うつ病経験者に共有すると、「わかるーーー!!!!」と言われたことが何度かありますので、ご参考までに。
上述の症状は、うつ病の症状として現れるものです。これらが、妊娠中や産後に現れるのが、妊娠うつです。妊娠中にこうした症状があらわれると、不安や悲観的な考えに支配され、これから始まる子育てへの自信がなくなったり、赤ちゃんの誕生を心から喜べなくなることがあります。するとそういう自分を責めてしまい、その自責感がさらに落ち込み・しんどさ・不安を加速させるという悪循環に入るのです。
「妊娠うつ」かも?と思ったら何をすべき?
正しい知識を得る
うつ病は、こころの病と言われることが多いため、その方の心の持ちようでなんとかなるものではないのか?という誤解を生んでしまっている現状があるようです。今では研究が進み、うつ病は、脳の機能障害(神経伝達物質の働きの低下・アンバランス)であると言われています。人間は、感情も行動も、脳がつかさどっているわけですから、それは気の持ちようや、気合いでなんとかなるものではないわけです。弱い人間だからなる病でもなく、母性が欠けている人がなるわけでもありません。過度なストレスがかかり、心身ともに休息が必要だと体が信号を発しているのです。
そうしたうつ病に関する正しい知識を得ることにより、無駄な自責感から解放され、また正しい対処法を見つけていくことができます。さらに、正しい知識を得ると、「うつ病」から距離をとることが出来ます。つまり、「自分のせい…」「私がこんな風になってしまったから…」といった「自分=うつ」という考え方になってしまうのではなく、「うつ病」と対抗している「自分」と、ふたつをしっかり別物としてわけて考えられるようになります。
ひとりで悩まずサポートを得る
「妊婦はみんな耐えていること」や「母親ならこれくらいできないと失格」などと自分を追い込むことをせず、サポートを得ることが重要です。パートナーや家族に相談しましょう。相談する人がいなかったり、いても理解してもらえないときは、かかりつけの産婦人科や地域の保健師さんに相談することをお勧めします。早期に相談すると、予後がいいのです。これはどんな病気も同じですよね!
専門医を受診する
餅は餅屋じゃないけれど、つらいときは、専門医にみてもらうのがいいと思います。マタニティブルーという言葉があるので、「こんなことで受診していいの?みんなこれくらいのこと耐えてるんじゃないの?」と思ってしまうかもしれません。しかし、マタニティブルーというのは、数日から10日ほどで消失するものと言われています。それ以上長引く症状がある場合は、うつ病を疑い、早期に受診されることをお勧めします。
うつ病には休息が絶対的に必要です。眠れないってほんとにつらい。どんどん心身ともに疲弊していき、悪循環に入ります。だから、眠れない、休めてない方は、眠れるように、休めるように、病院に相談されることをお勧めします。妊娠中だと、「薬出されたらどうしよう?赤ちゃんへの影響は?」と不安になることと思います。その不安をそのまま医師にぶつけましょう。きっちりとエビデンスに基づいた納得いく説明をしてもらえて、安心できたら飲めばいいのです。内服をするメリットやリスク、内服をせずうつ病悪化することのリスクなど、しっかり説明してくれる先生と出会えたことで、私は本当に安心できました。
カウンセリング
病院では、投薬だけでなく、カウンセリングをしているところもありますカウンセラーとお話する中で、自分のストレス要因を整理したり、今後ストレスなく生活する方法を模索することはとても有効だと思います。。投薬に抵抗がある方は、病院以外のところでカウンセリングを受けれる場所がありますので、まずはカウンセリングから始めるのもよいかもしれません。良いカウンセラーとの出会いがあれば、妊娠期だけでなく、その後長く続く子育てにおいても、継続的に相談できる人となるかもしれませんね。
環境調整
うつ病は、過度なストレス状況にもかかわらず、十分なサポートがなかったりといったような場合に起こりうる病です。そのため、回復には、どんなストレスを減らせるのか、誰からの理解が必要なのか、どこの部分は誰からのサポートを得られるのか、など環境調整をすることがとても大切です。自分やご家族だけで、環境調整が難しい場合は、専門医やカウンセラーに環境調整について相談されることをお勧めします。
何より何より大切なのは「理解してくれる人」
今日は、自分の実体験をもとに、妊娠うつについて書かせてもらいました。妊娠うつについて調べていると、妊娠うつになった方の多くが適切な治療を受けていない現実があると書かれていました。
実際、私も自分に不眠や不安症状が出始め、おかしいな…と思ったときに、まずかかりつけの産婦人科の主治医に相談しましたが、本当にさらっと流されました。「眠れない」と言っても、「妊婦さんは眠りにくくなるからね~」と言われ、また別の日には、「息ができない。酸素がたりない感覚がある」と言っても、「赤ちゃんがお腹の中で大きくなってきてるから、息しにくいと感じたりするのは普通です」と言われてその話題は数秒で終わりました。
私が心理士でなかったら、「あ…そうなんだ…。みんな妊婦さんはこんなこと耐えてるんや。自分も耐えないとあかんのや…」って思ってふんばっていたと思います。でもこれまでの知識や職業上の経験のおかげで、「いや…きっとこの不眠や不安感・息ができない感覚はきっと普通を超えている。うつ病の症状にもあるから、うつ病になっているのかもしれない。産婦人科医ではなく、専門医にみてもらったほうがいい」とすぐに判断できました。
案の定、精神科・心療内科と標榜している病院へ行くと、今の症状を説明したらすぐに、「そっか。妊娠うつで、うつ病と不安障害が重なったような症状がでてるね。しんどいね。でも必ず治るから安心したらいいよ。お薬を飲んでお母さんが元気になることがまず大事。赤ちゃんに影響のないお薬をだしてあげるから大丈夫」と言ってもらえて、安心して泣き崩れたことを覚えています。
産婦人科医は、お医者さんだけれど、うつ病の専門医ではありません。だから、さっきもいったけれど、餅は餅屋。うつ病の専門医にみてもらうのが、一番正しく導いてもらえると私は思っています。しんどさをしっかり理解してもらえ、多くの症例の経験からアドバイスをくれると思います。もちろん、産婦人科医でも、うつ病のことをしっかり勉強・経験しておられ、理解し対応してくださる先生なら問題なし!
とにかく絶対的に必要なのは、「理解してくれる人」の存在です。絶対にひとりで背負わないでください。それがパートナーや家族でもいいし、医療者でもいいしカウンセラーでもいいし、市の保健師さんでもいい。脳が誤作動おこしているときに、誤作動中の脳で考えだせることには限界と偏りがあった!って自分の体験から思います(笑)理解してくれた人たちに本当に助けられました。妊娠中は苦しんだ私ですが、理解してくれた人たちの支えのおかげで元気になり、子育てを楽しめていることに感謝です。
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