先日、年中てんちゃんの遠足がありました。コロナ時代に保育園に行き始めたせいか、お弁当をもっての遠足はたったの二回目。だから、お弁当遠足が楽しみで楽しみで、最近は寝ても覚めてもその話しかしないてんちゃん……と思いきや、たったの一度も遠足の話題も出さなけりゃ、お弁当の話もしてこない!!!私までお弁当遠足がせまっていること忘れてて、前日の20時にスーパーに猛ダッシュしましたよ!てんちゃん、言うてよっ!!!
そう、てんちゃんは、遠足や運動会や幼稚園から外の大きなプールにいく日♪など、一般的に楽しいと想定されている行事がそんな好きではない模様。ギャン泣きして抵抗するほどではないけれど、休めたらラッキーなテンションのてんちゃん。実は今年の運動会。まさかの高熱で出られなかったんです。一生懸命毎日毎日練習してきたのに当日出れないなんて…って、てんちゃんがかわいそうでかわいそうで泣けてくる私。なんとか熱でも出してやれないか…と考えまくった私。どうやって慰めようかと悩んだ私。だけど、ふたを開ければ、「休むわ~♪」って一瞬で決めたてんちゃん。その後、一度も「運動会行きたかった」発言は出ず。年長兄は運動会でいないため、家のおもちゃをひとりじめして大満足なてんちゃんでした。あ…行事やっぱ嫌なのね…とようやく私も悟りました。
でも、実はスクールカウンセラーしていると、これってそんなめずらしいことではないんですよね。遠足や運動会がしんどいお子さんってたっくさんいるんです。だから、参考までに、今日のてんちゃんの様子を通して、行事苦手な子ども達の理解や対応方法の一例をご紹介できればなと思います。
いつもと違う朝に不安爆発!
てんちゃん、いつもと違う服装で登園することにやや戸惑いがあったものの、なんとか着替えはクリア。そして、お弁当入りのリュックをもって、いつもと同じ時間に登園しました。順調ね…と思いながら、園の玄関が近づいてきたその時、突然てんちゃんが私の手を強く握ってきました。顔を見ると、不安げな表情。
てん「マミー!今日てんちゃんは何をしたらいいの?!!!!」
私「いつも通り、〇〇組のお部屋行ったらいいんやで。ほんで今日は遠足やから、先生が遠足行こう!っていわはるから、そしたらみんなと一緒に公園に行ったらいいんやで。」
てん「でもてんちゃんは何をしたらいいの?!!!!!」
てん「もうマミーが先生に聞いてきて!!!てんちゃんは何をしたらいいのか聞いてきて!!!」
不安が爆発し、同じ問いを何度も連呼していました。
なぜ遠足のような楽しい行事が苦手?なぜ不安が爆発した?
てんちゃんは、「いつもと違う一日」が始まることに、とても大きな不安を感じているのが明らかでした。それはなぜか。
「変化が苦手」という特性によるものだと私は理解しています。
自閉症スペクトラム症のある子どもや、発達特性があると言われる子どもたちは、「変化が苦手」な傾向にあります。いつもと違うせいで、これから何が起こるのかがわからない、つまり見通しがたたないということに、強い不安を感じやすく、不安からその状況に対して拒否感が沸いてくるのです。
「いつもの保育園のプログラムと違う」
「いつもと違う場所にいく」
「いつもと違う服を着ている」
などなど、ほんの些細に思えることでも、見通しがたたず、不安が大きくなり、パニックになってしまうことがあります。
いつもなら、玄関で靴を履き替えて、普通に教室に入っていくてんちゃん。「今日は遠足」というだけで、「何をしたらいいの?!」と、普段できていることもできなくなっていました。
いつもと違う状況に不安が爆発している子どもへのかかわり方
不安な気持ちを受け止める
不安になっていることを、否定せず、受け止めてあげましょう。
「いつもと違うから心配なんやね」
「いつもと違うから、何をしたらいいの~ってわからなくなったんやね」
そのまま見ている状況を、言葉に変換してあげるだけで十分です。そうすることで、子ども達は、今のこのよくわからない感情は、「不安」「心配」という感情なんだと理解していきます。そして、それを表現することは悪いことではないんだと学んでいくことができます。
朝のその時間。保育園ママたちにとっては、急いで仕事にいかないといけない超余裕ない時!
「何をしたらいいの?」なんて連呼されると、だんだん、「いつも通りやん!!!」といらだってしまうと思います。……え、みんなそうですよね?私だけじゃないと信じたい!
でもそこで、「いつもと一緒やん!」「何言うてんの?!」なんて言ってしまうと、受け止められなかった不安は増大する一方で、もっとややこしいことになります(笑)なので、まずは「不安な気持ちを受け止める」ことが、ママ出勤への近道です。
今回のてんちゃんは、「何したらいいの?」の連呼でしたが、時に、不安を別の行動であらわす子ども達もいます。風を切って走ってみたり、ジャンプしてみたり、においを嗅いだり…。それらの行動を無理に止めようとすると、先ほどと同様に余計に不安になるということがあるので、ある程度そうした行動を受け止めることも大切です。
見通しを持てるようにサポートする
特性のある子ども達が、変化が苦手なのは、いつもと違う状況により、「これから何が起こるのかわからない」という、つまり【見通しが立たない】ということに不安を感じると言われています。だから、周りの大人が、これから何がおこるのか予測できるように見通しを伝えることで、安心して行動できるようになります。
「今日は遠足。まず最初に教室に入って、荷物を自分のロッカーにおいたらいいよ。そのあとは、朝の会があるからね。朝の会が終わったら、トイレに行って、トイレが終わったら、みんなでバスに乗って出発するよ。」などなど。
ここでひとつ難しいのは、母は今日の細かい予定を知らないことが多い!
遠足に行くってことは知ってるけど、その前に何するのか、何時に出るのか、などなど詳細を知らないですよね。でも、行事が苦手だったり、いつもと違うと不安になるお子さんを持つ場合は、先生と連携をとって、事前に流れを教えてもらうことをお勧めします。私は、てんちゃん不安になりそうやな…っていう行事の前は、確認するようにしています。
見通しを伝える時に、言葉ではイメージがしにくいお子さんには、絵カードや写真を見せながら、簡単に想像して理解できる方法を用いることをお勧めします。
あいまいな説明は避け、具体的に説明する
自閉症スペクトラム症や特性のある子どもは、あいまいな言葉を理解しにくい傾向があります。「ちょっと」とか、「なんでもいい」とか、「きっちり」と言われても、それがどの程度なのかわからず混乱し、余計に不安になってしまいます。
実は、てんちゃんが不安になって、「どうしたらいいの~?」と私に連呼したあと、こんなことがありました。
ある程度の見通しを伝えた後、てんちゃんが上靴に履き替えるのを手伝い、教室まで連れて行きました。(普段ならここまでしなくてひとりで行ける時もありますが、この日は不安爆発してたので、きっちりサポートが必要でした。)そして、念のために先生に、「いつもと違う日だからだと思うんですが、僕は何したらいいの~ってすごく不安がっています」って伝えました。そしたら、先生がてんちゃんに向かってこうおっしゃいました。
先生「何にもしなくていいよ~」
先生がよかれと思って、愛情たっぷりに言ってくださった言葉。だけど、この「何にもしなくていい」というのは、安心にはつながらないのです。何にもしないけど、そこに居続けるって、とても難しい。結局、何したらいいの?っていう問いに返ってくるわけです。案の定、てんちゃんは、「マミー行かんといて!!!!」となりました。
こういう時はあいまいな指示ではなく、具体的な指示をもらえると安心できることが多いです。
私から先生に尋ねました。「いつも通り、遠足の荷物はロッカーにいったんいれたらいいんですか?トレーナーはどうしたらいいですか?」など。そしたら、先生がそれぞれの置き場所を教えてくださったので、「てんちゃん、今日は暑いからトレーナーいらないし、トレーナーをロッカーにおいといで。遠足の荷物は、〇〇に置いておいで。それが終わったら、先生に終わったよ、次はどこにいって何をしたらいい?って聞いてごらん。」と伝えました。
するとてんちゃん、「わかった」といって、トレーナーをロッカーに置きに行きました。具体的な指示があったことで、見通しがたち、私から離れることができました。
ここで私の時間切れ。あとは先生に託して、出勤しました。先生に、まだ不安感たっぷりなのでサポートお願いします~!とだけ声掛けすると、OK!という合図をくれて、安心して出勤できました。感謝感謝です。
夕方お迎えに行って、聞きました。
私「てんちゃん遠足行った?何したの?楽しかった?」
てん「忘れた~」
いつも「忘れた~」と言われて何したかよくわかんないけれど、いつもよりたくさんの量が入っていたお弁当は空っぽでした。自己満足だけど、空っぽのお弁当箱を見て、とっても幸せな母でした。
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