先日、ほっしゃん(6歳・年長)の保育園で、卒アル用の写真撮影の日がありました。一生残る写真…。しばらく散髪に行っていないほっしゃんを見て、聞いてみました。
私「ほっしゃん、卒園アルバム用の写真を撮る日があるらしいから、それまでに散髪いってかっこよくなっときたい?」
ほっしゃん「卒園アルバムって何?」
あ…そこからね。言葉での説明では伝わりそうになかったので、私の数十年前のアルバムを引っ張り出してきて、説明しました。そしたら、「うん、切りに行く」と。いや~~~、成長した!実に成長した!なぜなら、ほっしゃんは、散髪が大の大の大の苦手だったから!まさかほっしゃん自ら「切りに行くわ」なんていう日がくるなんて、誰が想像できたでしょう(母泣)。
母が感傷に浸っている傍で、別のアルバムを見て、ほっしゃんと弟てんちゃんが、大笑いして転げ回っている。
私「そんなにおもしろい写真あった?」
2人「でぶすぎる赤ちゃんがいるーーー!!!ギャハハハハハハハハー!!」
見たら、産まれて数日後に、ちゃんとベビードレス着せてもらってる私の写真やん!
おいっ!
さてさて、話は戻って、発達障害や感覚過敏の特性により、散髪が大の苦手なお子さんがおられることをご存知でしょうか?お子さんの髪の毛をきってあげたいのに切らせてもらえなくて、もしくは美容院から断られて困っているママやパパがたくさんおられることと思います。今日は、我が家のボーイズの散髪事情を振り返りながら、散髪嫌いの理由とサポート方法の一例をご紹介できればと思います。
初散髪で母子共にトラウマ体験?!
かれこれ4年ほど前のこと。ほっしゃんを初めて散髪につれていきました。当時から、帽子やジャンパーは拒否したし、同じ靴しか履けなかったし、繊細ボーイであることは認識していました。美容院のケープを拒否することは想定できたので、事前に電話をし、それでも対応してもらえることを確認しました。
そして当時はトミカが大大大好きだったので、車に乗って散髪してもらえる美容院を探して予約をとりました。(画像はお借りしました)
車にのって、DVDがあって、ケープを強制しなければなんとかなるかな…なんて思った自分を殴ってやりたいくらいの誤算でした!まず車に座らない!車は諦め、私の膝の上に座ったんですが、最初から最後までありえないレベルのギャン泣き。高層ビル1階から10階までに響き渡っているんではないかと思うほどの叫び声が永遠に続きました。「切り始めたからもう引き返せない」と言う気持ちだけで、とりあえずもう「ぐちゃぐちゃでも全然いいから、もう適当に終わってください!」とお願いしました。私はもはや本気でぐちゃぐちゃでも終わっていいと思ってたんですが、あちらは散髪のプロ。ぐちゃぐちゃでは返せないというお気持ちをもってくださってたのかもしれません。とりあえず最速で最後まで切ってくださいました。ケープをつけていないもんだから、ほっしゃんも私も髪の毛まみれ。ほっしゃん、かっこよくなったものの、母子ともに笑えないほどのトラウマ被害 笑。いや、母子だけではないね。間違いなく、切ってくれた方もトラウマ被害を受けられたことでしょう…笑
すごく反省しました。息子にこんなにまでの恐怖を体験させてしまったこと。どれだけ不快だったんだろう。どれだけ怖かったんだろう。こんな思い二度とさせたくない。
その日から一年以上、散髪に行こうと思うこともなく、家でたまーに少しずつカット。今日は右だけ、明日は左だけ…とかだったので、冗談じゃなくざんぎり頭♪
散髪がそこまで苦手な理由は?
散髪がそこまで大の苦手になる理由は色々あると思います。長時間座っていられない。座れてもじっとできない。ケープやタオルを巻かれるのが嫌。ハサミが怖い。人に触られるのが苦手。特に頭や耳の周り、髪の毛は絶対いや!切った毛があちこちにつくことが耐えられない。慣れない場所や人が苦手。バリカンやドライヤーなどの大きな音がこわい。美容院の明るい照明がまぶしい。シャンプーとかににおいが嫌い。他のお客さんたちの声が苦手。新しい経験への抵抗感…などなど。
そうなんです。繊細な子たちにとっては、美容院は不安を引き起こす要素であふれているのです。
そもそもどうして、みんな普通にしていることが嫌だったり、こわかったりするのか?
それは、「感覚過敏」という特性によるものだと言われています。
感覚過敏とは、聴覚、視覚、触覚や嗅覚など五感で感じる感覚が過剰に敏感な状態を意味します。多くの人にとっては些細な刺激であっても、感覚過敏のある人にとっては、日常生活に支障をきたすほどの苦痛をひきおこすことがあるのです。周囲の人と同じ感覚情報を受け取っていても、脳が異なる捉え方をすることによって、感覚を過敏に受け取ってしまうと言われています。
こうした感覚過敏は、ADHDや自閉症スペクトラム障害など発達障害の人によく見られる特性ですが、感覚過敏があるからといって、発達障害があるとは限りません。
散髪苦手なお子さんへの関わり方
散髪が苦手といっても、ひとりひとり理由や状況は違うはず。そのため、答えはひとつではないけれど、どの子にも大切になる関わり方をまとめてみたいと思います。
不安や恐怖を否定せず受け止める
上述したように、脳が違った捉え方をし、苦痛を伴うほどの刺激を受け取っているのですから、感覚過敏に伴う不快さや痛み、不安や恐怖を否定したり過小評価せず、そのまま理解し受け止めることが大切です。
ほっしゃんが、「散髪は痛い!」と言った時、「いやいや~髪の毛には神経通ってないから痛いわけないよ~」と言われたり、ケープをかぶれないことに対して、「何にも苦しくないよ!髪の毛つくほうが気持ち悪いよ!」と声をかけられたり。バリカンも、シャワーも、ハサミも、「なんも痛くもこわくもないよ~」と何度も言われていました。
全部全部間違っていません。初回の時は私もよかれと思って、そういう言葉を連発していたと思います。が、ほっしゃんには、散髪は痛く、ハサミのシャキンは怖く、ケープは髪の毛がつくことよりも苦しく、バリカンの音はうるさく、シャワーは恐怖だったのです。どれだけ言葉で諭されても、ほっしゃんが受け取っている感覚は事実なんです。
なので、私からかける第一声は、「こわくないよ」「痛くないよ」ではなくて、「痛いんやな」「苦しいんやな」「こわいんやなぁ」「うるさいんやな」とそのままを受け止めることだと反省したわけです。
本当に理解したら、「ちょっとだけやから大丈夫!」なんて簡単に言えないことに気付かされます。だって、「ガラスの破片の上、裸足で歩いてみて。ほんのちょっとだけやから♪」って言われて、「ほんのちょっとならがんばるわ」って思えます?私は思えません!!
本当に理解して受け止めて初めて、じゃあ、その苦しみをどうやって軽減してあげれるかな?というスタート地点にたてるわけです。
不快な感覚を特定して対策を検討する
感覚過敏とひとことでいっても、人によって症状は様々です。ほっしゃんの場合は、ケープを着せられることの不快感、ハサミでシャキンとされる時の痛み、照明のまぶしさ、ドライヤーの音、などは全部だめでした。なので、ケープを着れるようになったのは前回の散髪からですし、ドライヤーは今でもできません。シャンプーも今でもできないのですが、それは寝ころんだ時の天井の照明のまぶしさが嫌なようです。タオルを顔にかけてもいいよ~と伝えましたが、そんな不安な状態になってまでやりたくないそうです。そらそうだな…(笑)。
なので、お子さんが、何に対して不快感や不安・恐怖を抱いているのか特定することが大切だと思います。普段から、まぶしいときは目を隠すなぁとか、大きい音は嫌がるなぁとか、そういうことを知っている親御さんが一番特定しやすいかもしれません。特定できれば、対策を考えることができます。賛否両論あるようですが、排除できる不快感は排除してあげるのがよいと私は思っています。なので、ほっしゃんは、ケープもいりませ~ん。散髪後のシャンプーも、ドライヤーも、ヘアセットも全部パスでお願いしました♪ある意味、美容院の醍醐味全部パス(笑)
「排除してしまうと、一生それを排除しないといけない子になるんじゃないの?」という心配をよく耳にします。そんなことはありません。「今日」のその子の発達段階や感覚においては、それが不快で耐え難いけれども、それが必ず一生耐えられないとは限らないのです。実際、今のほっしゃんは、ケープはへっちゃらです。私が、必死でケープを練習させたわけではありません。彼の成長とともに、ある日、「服が髪の毛でいっぱい汚れる不快さに比べたら、ケープする不快さの方がましやな」って思う日がやってきただけのことです。子ども達は日々成長するのです。
じゃあ、そんなケープみたいに簡単に排除できないは?「ハサミ排除!」っていうわけにはいきませんもんね。それは安心して慣れていけるように、スモールステップに分けて考えていくことをおすすめします。
子どもは安心できる環境の中で、成長する。安心できる環境の中では、できることが増える。
私が大切にしている考え方です。
見通しを立てられるようにサポートする
美容院は色々と不安な要素が多いことに加え、「新しい体験」もしくは「やり慣れない体験」だということが、さらに不安を増幅させてしまいます。つまり、ここに座って、これからどうなるのか見通しがたたないのです。
そのため、「散髪」というものは、どういうものなのか、具体的に手順を伝え、お子さんが見通しを立てられるようにサポートすることが大切です。言葉での説明ではイメージがわきにくいお子さんの場合は、イラストや写真を見せ、順番がわかるようにしてあげると有効かもしれません。
また、あいまいな言葉を使わないような配慮が必要です。一回目は私も言いまくっていたに違いない「もうすぐ終わるよ~」「もうちょっとだけだよ」「ちょっとだけ我慢しよ~」って、「ちょっと」がどれくらいかイメージできない。そして「ちょっとちょっと」と言うくせに、なかなか終わってくれない。信頼関係も崩れてしまいます。先ほどのイラストによる手順表や、具体的な数字・時計の針、などを使用してみると少し見通しが立てられて安心につながるでしょう。
トラウマ体験にならないよう無理強いしない
最後に大切なことは、一度に頑張らせすぎて、散髪をトラウマ体験にしないことだと思います。「苦痛で恐怖で仕方なかったのにやめさせてもらえなかった」という体験をしてしまうと、もう次の散髪がよりハードルのたかいものへとなってしまいます。だから、無理強いしない。細かく細かくスモールステップですすめていくことが、次につながる秘訣です。ほっしゃんも、美容院の前まで行くということを4〜5回しました。中に入れるようになってから、椅子に座れるようになるまでも、細かく細かくスモールステップにわけていきます。
周りの大人にできることは、本人のタイミングを待ちながら、でもただ待つのではなく、安心を整えて行くこと。本人の興味ややる気がくすぐられる仕掛けを散りばめること。
「安心できる環境で子どもは成長する」と信じること。
安心感を積み重ねながら散髪しよう
今回はすんなり髪を切れたほっしゃんですが、ここまで来るのに数年かかっています。そして、今でもシャンプーやドライヤー、ヘアセットは無理です。でも、安心感を積み重ねることで、ここまで来ることが出来ました。
ちなみにその日、一緒に美容院へ行った弟のてんちゃん(年中)は切りませんでした。ふたりともカットできたらいいな~と私的には思っていたのですが、てんちゃんの中にはまだ安心感が積み重なっていなかったようでした。美容院までいったけど、「てんちゃんは切りたくない!」と言ったので見送りました。カットはできなかったけど、「お兄ちゃんがカットしてかっこよくなったのを横でみとく」というスモールステップは踏めました。大丈夫。てんちゃんも、てんちゃんのタイミングで成長していくから。そうそう、なんにもしてないてんちゃんにまで、ジュースをくれた美容師さん。本当にありがとうございます。そういう体験が、安心感につながっていくんですよ~~。
こうしたプロセスには、特性を理解してくれる美容院の存在が不可欠です。そんな美容院のお話も、また次回にでもできればと思います♪
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